解説　江川紹子

「美談の男　冤罪 袴田事件を裁いた元主任裁判官・熊本典道の秘密」2010年6月　鉄人社　改題、加筆訂正、「文庫版まえがき」、「IX 四年後　あとがきに代えて」を書き下ろし
朝日文庫　2014年6月30日　第1刷発行

1966年に発生した強盗殺人放火事件に対する冤罪。
2014年3月27日に再審開始、死刑および拘置の執行停止を静岡地裁が決定した。
しかし再審開始については高裁で審理継続中。
この本であつかわれているのは、事件の一審で死刑判決を書いた元裁判官・熊本典道氏。
2007年に「評議の秘密」を告白したのはなぜなのか、彼になにがあったのかが描かれている。
単に正義の人であるとしているのではなく、家族を含め様々な葛藤があったことがわかる。
自分の思いを押し殺すことができないのは、ただの我が儘なのか。引っかかりをやり過ごせなかった愚か者なのか。与えられた役割を無難にこなすのであれば自分である必要がない。何をしても誰かが何かを言うだろうが、それは誰かの問題だ。自身の心のつかえを見逃すことはできない。