2009/03/01 接吻

estis2009/03/02 (月) 16:51 に投稿

「一家三人殺害の犯人を偶然ニュースで知り、惹かれた女は、その男のことを調べ、裁判を傍聴し、差し入れをくり返し、声を聞きたいと願う。」
2006年/日本
監督:万田邦敏
出演:小池栄子/豊川悦司/仲村トオル/篠田三郎

小池栄子の映画だった。
タイトルがなぜ、「接吻」なのか。
もっと早く二人が会っていたら...、どうかなったのだろうか。

冒頭、小池栄子に仕事を押しつける女よりも、関西弁でそれを窘める女の方が嫌だ。

う〜ん、これ以上は見ていない人には内緒。映画好きなら一度見てください。ただし、題材が上記のようなものなので、理解し合っている人となら一緒に見ましょう。もしくは、理解する必要のない他人と。


では、ここからは映画を見た人が読んでいると想定して書きます。

小池栄子の出演している映画を見た記憶が今までないので、今までとイメージ一新なのか、演技開眼なのかはわからないですが、とにかく恐い。
初めて弁護士に話しかける時でも、とにかく人の顔を見ない。
他人が最初から自分に対して思いこみを持って接するというようなことを彼女は語るけれど、他人はそんなにまであなたを思わない。あなたが生きていて楽しいかどうかなんて、他人には関係ない。生きていて楽しい事なんてこの人には無いんだろうなって思ってくれたとしたら、僅かばかりでもあなたに関心を向けてくれったてことだ。
でも彼女は関心を向けないのだな。誰もが自分を利用するように思っているくせに、自分にとって利用価値があるものにしか向かい合わない。

自分と全く同じ存在なんて存在しないってことがわからなかったんだね。違うことが許せなくって、理解できなくって、自分の手の中にしまっておくために、刺してしまった。
誰かに助けてもらおうとしか思わなかった。彼を助けようなんて思わなかった。自分が必要とされていると思いこめる場所を見つけたと勘違いしただけ。私には必要だって言いながら、私を必要としろと迫っているだけだ。
彼女が弁護士に「わたしのことが、そんなに大事?」と訊ねたとき、弁護士が、「たぶん」ではなく、「君が大事だ。私には君が必要だ。」などと言ったら何かが変わったのか。

この弁護士の行動、特に結婚をリークすることは、弁護士倫理としては考えられない。
考えられない行動をするのは、弁護士は彼女に惚れてしまっていたわけだ。
彼女はそれに充分に気付いていて、その上で行動を起こしたのだろう。

自身の描いていた未来を勝手に変更しようとした男には死んでもらい、そしてもう一人、自分を必要だと思いつつある男に留めを刺す。そのための第一手段が「接吻」なのではないか。
そして最後の「ほっといてよ!」がダメ押し。
本当に放って置いて欲しければ、何も言わず黙っていればいいのだから。