仁木悦子

estis2011/03/02 (水) 00:00 に投稿

聖い夜の中で

 

江戸川乱歩の名を冠した江戸川乱歩賞は、第三回から現在のように新人発掘を目的とした賞に変わりましたが、初めて(つまり第三回ですが)賞を受賞したのが、仁木悦子です。「猫は知っていた」で受賞しました。
写真は、仁木悦子の最後の作品集で、右が1991年、左が2006年の版です(どちらも光文社文庫)。
2006年に、15年振りの再刊時カバーが変わったのを、新作だと思って購入したので、二冊あるのです。

表題作「聖い夜の中で」が絶筆です。
タイトルどおりのクリスマス・ストーリーです。
クリスマスの夜、ひとりぼっちの少年は、昔おばあちゃんに聞いたサンタに会いたくて、一人町に出て、サンタと遭遇します。しかしそのサンタは、脱獄囚が変装したものでした。少年はサンタに会えてとても喜ぶのですが、サンタは彼を人質に逃亡を企てます。

サンタの心情はほとんど語られないのですが、その行動の理由の中に彼自身の物語をどれだけ見るかで感じるものは変化するでしょう。

「あのねえ、サンタクロースって、となかいがなくても空を飛べるんだよ。ことしは、となかいは連れて来なかったんだって」