寺山修司「さかさま世界史怪物伝」「さかさま世界史英雄伝」

estis2011/03/08 (火) 00:00 に投稿

さかさま世界史 英雄伝・怪物伝

 

寺山修司「さかさま世界史怪物伝」角川文庫 1974
寺山修司「さかさま世界史英雄伝」角川文庫 1974

誰にでも決定的な一冊というものがあると思う。
運命を変えた一冊というと大げさすぎるが、それを読んで世界を見る目が変わったという本は、私の場合、まずこの二冊だ。

寺山修司が、歴史上の人物を題材にいろいろ語る評伝集で
「怪物伝」ラスプーチン/アラン/写楽/サド侯爵/アンデルセン/ニュートン/西鶴/ポオ/スウィフト/馬琴/サン=テグジュペリ/マキャベリ/ヴィヨン/モーゼ/魯迅/ガンジー/ヒットラー/クラウゼウィッツ/ランボー/グリム兄弟/ネロ/空海/ダーウィン
「英雄伝」コロンブス/ベートベン/エジソン/イソップ/ガロア/シェークスピア/二宮尊徳/ゲーテ/ダンテ/スタンダール/毛沢東/カミュ/ニーチェ/聖徳太子/カフカ/マルクス/紫式部/セルバンテス/トロツキー/孟子/キリスト/プラトン/リルケ
の46名が取り上げられている。

例えば、イソップでは、
一匹のイヌが肉片をくわえて河を渡ろうとするとき、河にうつっている自分を見て、肉をくわえたべつの犬だと思う。そこで、その肉も自分のものにしようと河に跳びかかってゆき、自分のくわえていた肉を失ってしまう。つまり、欲ばると何かも失うよということだ。
と、されているが、このイヌが肉片を失ったのは、欲ばったからではなくて、河にうつっているのが自分だと知らなかった、つまり無知だったからだ。欲張りでなかったら資本主義社会で成功できない。
であるとか、キリストだと、
ホントよりも、ウソの方が人間的真実である、というのが私の人生観である。なぜなら、ホントは人間なしで存在するが、ウソは人間なしでは、決して存在しないからである
といった感じ。

私がこれを読んだのは、中学生の頃だったか。
ああ、そんな考え方をしてもかまわないんだ、ということを教えられた。堅苦しい生活に、どこかしら穴が開いた気がした。