2010/05/24-2 世界の合言葉は水

estis2010/05/25 (火) 22:37 に投稿
安堂維子里

おぼん
私たちはまだ途中
Fusion
なんて哀しい星
塩害の季節
海のお天気
ぎゅう
メルトイズム
季・節・水
あとがき

初出
季・節・水「月刊COMICリュウ」2008年1月号
海のお天気「月刊COMICリュウ」2008年4月号
メルトイズム「月刊COMICリュウ」2008年6月号
なんて哀しい星「月刊COMICリュウ」2008年8月号
おぼん「月刊COMICリュウ」2008年9月号
Fusion「月刊COMICリュウ」2009年1月号
ぎゅう「月刊COMICリュウ」2009年6月号
私たちはまだ途中「月刊COMICリュウ」2009年10月号
塩害の季節「月刊COMICリュウ」2009年12月号
あとがき 2010/3/13

編集担当:平田輝(エアインテーク)

RYU COMICS p.168

2010年4月10日 初版発行

装幀:西口博

株式会社 徳間書店


おぼん
 {あるお盆のはなし}
私たちはまだ途中
 {宇宙へ、地球から旅立つことの物語}
Fusion
 {結ばれるという意味の極}
なんて哀しい星
 {星が回る理由}
塩害の季節
 {エンガイ発生}
海のお天気
 {海には海の生活が}
ぎゅう
 {層想力}
メルトイズム
 {分離しているのはなぜ}
季・節・水
 {季節を伝える大気水}


感想
安堂維子里の第一短編集。
次は長いものを読んでみたい。細部が破綻していてもかまわないので、長く読ませることができるものを。

おぼん

早く帰ってきてほしいから馬で、ゆっくり帰ってほしいから牛なのだそうな。しかし、皆が帰ってくるわけではないらしい。
この一編は、カラーリングされている。
公衆電話を知らない世代ってのも登場するんだろうな。角のたばこ屋も絶滅寸前なのかも。

私たちはまだ途中

まだ途中だとして、その先へ行く方法は他にあると思うのだけれど、急ぎ過ぎたのは、待ってられない事がわかってしまったからでしょうか。

Fusion

この物語どおりの世界だと、始まりはいったいどうなっていたのだろうかと。その謎は語られいないのだけれど、ある日突然そうなったとするなら、その状況を受け入れて、仕方なくも当たり前になるまでの人々に興味が沸く。ここでは誰もそれが当たり前になってしまっていて、二人のまま朽ちるか、一人減っても繋ぐか、という選択になっているのか。
二人でいたいけれど、近づきすぎると究極まで融合して一人になる、その二人の物語も見たいですね。
この作品集から感じる作者の主流ではなく、支流だろうが、この世界を元に、長編化、または連作短編を読みたい。

なんて哀しい星

走っても走ってもただ廻っているのは、君より寂しい誰かのせいです。

塩害の季節

タイトルは再考が必要だと思うが、作品集中最高、要必読。
最後から2ページ目に真実がある。
特別な珈琲を用意して読みましょう。

このヒロインも、思い切る人なんだな。

海のお天気

他の人には海の生活が真実のものでなくても、彼女にとってはあったことであればそれでいい。
記憶なんてそんなものだ。より良い目的のために利用できればよいのだ。

ぎゅう

細胞への想像展開があるけれど、そちらへ流れていくのではなく「笑える」へ流れていくのが、安堂維子里の味なんでしょう。

メルトイズム

分離しているのは、誰かが私を呼んでくれるから。
「私たちはまだ途中」のヒロインは、どこまで行っても私は私を、確認したかったの。

季・節・水

安堂維子里の作品の主たるイメージは、この作品のような世界の異なる眺めを知らせてくれるもの。
物語は希薄だが、イメージは豊饒。