安堂維子里
おぼん 初出 編集担当:平田輝(エアインテーク) RYU COMICS p.168 2010年4月10日 初版発行 装幀:西口博 株式会社 徳間書店 おぼん
感想
安堂維子里の第一短編集。
次は長いものを読んでみたい。細部が破綻していてもかまわないので、長く読ませることができるものを。 おぼん
早く帰ってきてほしいから馬で、ゆっくり帰ってほしいから牛なのだそうな。しかし、皆が帰ってくるわけではないらしい。
この一編は、カラーリングされている。 公衆電話を知らない世代ってのも登場するんだろうな。角のたばこ屋も絶滅寸前なのかも。 私たちはまだ途中
まだ途中だとして、その先へ行く方法は他にあると思うのだけれど、急ぎ過ぎたのは、待ってられない事がわかってしまったからでしょうか。
Fusion
この物語どおりの世界だと、始まりはいったいどうなっていたのだろうかと。その謎は語られいないのだけれど、ある日突然そうなったとするなら、その状況を受け入れて、仕方なくも当たり前になるまでの人々に興味が沸く。ここでは誰もそれが当たり前になってしまっていて、二人のまま朽ちるか、一人減っても繋ぐか、という選択になっているのか。
二人でいたいけれど、近づきすぎると究極まで融合して一人になる、その二人の物語も見たいですね。 この作品集から感じる作者の主流ではなく、支流だろうが、この世界を元に、長編化、または連作短編を読みたい。 なんて哀しい星
走っても走ってもただ廻っているのは、君より寂しい誰かのせいです。
塩害の季節
タイトルは再考が必要だと思うが、作品集中最高、要必読。
最後から2ページ目に真実がある。 特別な珈琲を用意して読みましょう。 このヒロインも、思い切る人なんだな。 海のお天気
他の人には海の生活が真実のものでなくても、彼女にとってはあったことであればそれでいい。
記憶なんてそんなものだ。より良い目的のために利用できればよいのだ。 ぎゅう
細胞への想像展開があるけれど、そちらへ流れていくのではなく「笑える」へ流れていくのが、安堂維子里の味なんでしょう。
メルトイズム
分離しているのは、誰かが私を呼んでくれるから。
「私たちはまだ途中」のヒロインは、どこまで行っても私は私を、確認したかったの。 季・節・水
安堂維子里の作品の主たるイメージは、この作品のような世界の異なる眺めを知らせてくれるもの。
物語は希薄だが、イメージは豊饒。 |